自然農法で育てられているこの畑には、食用や種採り用のさまざまな花が咲き、過ぎ行く季節と、そしてまだ土から出てきたばかりのさまざまな芽が来るべき夏の準備を感じさせてくれた。
有機農業をやっている農家にとって、種採りは本当に醍醐味なんだという。「種採りもするし、去年のこぼれ種が本来の発芽したいタイミングで出てくるんですよ。」植物たちの誕生と再生の自然な流れが見える。そんな気分になった。
「普通なら収穫期を過ぎた野菜はすぐに片付けた方がいいと思うんだろうけど、例えば大根の実なんかも早いうちは柔らかくて大根の味がして美味しいんですよ。花もぴりっとして美味しい。種採りをする農家ならではの楽しみです」畑を歩きながら、いろんな野菜やハーブの花がいかに美味しいかというレクチャーは、とっても興味深かった。
ここ茨城県那珂市のPOCO A POCO農園さんは、ちょっと変わった西洋野菜や日本の在来野菜を自然農法で育てている一風変わった農家さん。不定期を合わせると30件ほどのレストランに野菜を出荷したり、個人宅配などを行っている。圃場は他の有機農家さんと比べると少し小さ目。けれど、トマトだけで20種類近く栽培されている。トマトの種は60種類くらい持っているのだそうだ。農業系の大学でたくさんの農薬に触れ、先端科学で生み出された野菜を見てきた。安全だよと教えられる一方で、農薬を多く触れた日の夜の飲酒を禁止された。それらに疑問を感じ、行き着いた先が今の自然農法なんだろう。いまは自然に寄添った形で試行錯誤を行っている。スペルト小麦を育て、その麦藁や最低限の草取りで取った草でマルチを行う。ハウスは使うが、加温はしない。3年前に植え、いまでは繁茂しているイチゴの中を宝探しのように見つけ出して、つまみ食い。その美味しさに驚いた。「これは少し前のアスパラガス」と言ってみせてもらったものは時期を過ぎて種がたくさんついていた。「今はF1の雄の種しかほとんど売っていない」「種を採られて増やしたら種屋が困る。昔のは雌もあった。ほんとうは雌の方が美味しいんですよね。うちは両方あるから種が採れるんです」と言っていた。
ほんの少しの間だったけれど、草取りの御手伝いを少しさせて頂いた。「我が家の草取りは大雑把」と笑いながら続ける和知さん。「自然農法に切り替えて、数年でヨトウムシの害がほとんどなくなった。他の草もあるから、野菜だけ食べられることが無いのかな?」と話す。「化学農薬に限らず、木酢液などに含まれるフェノールなども含め、害虫に影響のあると言われているものは、他のものにも何かしら影響があるはず」と何も使わないというのが、和知さん流。人一倍安全に気を遣ってきた和知さんだけに今回の放射能の問題は当然目を背けられない問題だった。震災時は畑で「もうダメかと思うほど揺れた、山も揺れて杉の花粉が一斉に飛び、煙っていた。畑から水柱が飛び出し、立っていられなかった。」と言う。それでも持ち前の明るさでなんとか凌げたが、放射能の問題が出て、出荷制限が出た時は、しばらく農業を止めようと本気で考えた。
けれど、ここは東海村が近いこともあって茨城でも一番放射能の情報が多い地域。毎時ごとに数カ所で空気中の放射線値を計っている。いまは0.08マイクロシーベルトで震災前の通常時とあまり変わらない。さらに毎週ほうれん草やお茶、小麦など、自治体によって放射能が検出され易い作物を検査しているらしい。和知さんにもまだ保育園のお子さんがいる。「もしまた水素爆発なんかが起きたら、考えなきゃならないけど、今は大丈夫だと検査の発表を信じる。」同じ子を持つ親として、決して安全管理には手綱を緩めない和知さんの姿勢そのものに、自分の食べる野菜の安全性を重ねた。誰よりも安心安全を考えているアースデイマーケットの農家さん。だからこそ、信頼してその魅力を楽しみながら頂きたいと思う。
6/26のマーケットに出店されます。
自慢のトマトも間に合うはずとのこと。
みなさまお楽しみに!